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新旧小説とコミック・ゲームのレビュー。参考点数付。
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火車/宮部みゆき(900円・新潮社)
いわば本格サスペンス。傑作です

今更といえば余りに今更ですが、本書を読み終えて「これぞ本物のサスペンス小説」という思いがこみ上げてきました。僕自身、宮部氏の実力を読み誤っていたという気もします。クレジットカードが作れないことをきっかけに失踪した女性を追って、細かな手がかりを手繰り寄せて真実にいたる道程がなぜこんなに面白いのか。派手な展開こそ無いものの、無駄のない展開で、例えは変かも知れませんが、到底登れないと思っていた山に着実に登っていく快感がありました。血肉の通った人物の描写も見事です。

物語のテーマはクレジットカード・ローン破産の悲惨さとその「日常性」。約15年前の作品なので、やや時代設定が古くなってしまってますが、誰もがつまづく可能性があるローン・クレジットの罠が描かれています。僕自身、社会人になりたての頃に背伸びして車をローンで買った経験がありますが、とにかく毎月の固定費が増える息苦しさというのは独特の苦しさがあります。「軽い気持ちで組んだローンが日々の生活に暗い影を落とす」--先ごろ利息のグレーゾーンが話題になり規制が強化されましたが、まさに今の社会に相応しいテーマと言え、身近で興味がつきません。

毎度おなじみWiki参照の知識で恐縮ですが、サスペンス=読者の不安感を煽るものと簡単な説明があります。そういう意味では、このジャンルのど真ん中に位置するのではないでしょうか。ミステリーに本格ミステリーというジャンルがありますが、これはまさしく、奇抜な手やホラー要素のない本格サスペンスです。関西人の僕には、大阪や三重の風景が楽しかったです。余談になりますが、物語のキーワードの一つのあの建物も近年なくなってしまいました。バブル直後の時代感も懐かしい限りです。

最後になりますが、この作品を贈ってくださったyurinippoさん(おうちしごと日報)に謹んでお礼を申し上げます。率直に言って「新たな金鉱(宮部金鉱)を見つけた!」気分です。本当にありがとうございました。宮部作品はほとんど読んでいないので、有名どころからたどってみようと思います。

火車>AMAZON
読書ノート評価:88点
短評:所々にゲームの描写があって、その的確さに笑いました。さすが当代きってのゲーマー作家です。また、このブログを書いていて本当に良かった、と思いました。自分ひとりでは読書の幅はあまり広がりませんので。
# by kyura130 | 2007-01-28 17:16 | 小説/読物
タイスの魔剣士・グイン・サーガ111/栗本薫(567円・早川書房)
面白さの質が変質

ブログ開設後、ちょうど100作目の紹介はやはりというか「グインサーガ」の第111巻「タイスの魔剣士」です。最近「グインサーガ」は、ほとんど2ヶ月に1冊のペースで出版されているので、キリ番(きりのいい番号)になる確率は一番高いと思ってましたが、週間漫画のコミックスより早いペースで刊行されている事実は驚異的です。

一読して、非常に面白かったのですが、何だか釈然としない気持ちが残ります。それはなぜか? 恐らく、僕が期待する面白さと作者が提供する面白さの質がズレているからです。今回は作者いわく「少年ジャンプ」だそうで、補足すると「天下一武道会(ドラゴンボール)」です。無名の戦士(と偽装している主人公・実は王様で超戦士)が闘技場で強敵を次々ねじ伏せていく展開です。

僕なりの理解では、グインサーガの面白さは、長大な物語の中で変転する登場人物の運命の行方だと思っているのですが、ここ最近は非常に刹那的というか、もっとはっきり言えば「思いつき」な感じがします。「面白かったんだから、四の五の言うな」と言われるとそうなのですが、そういう「面白さ」を作者は求めていたのか? と、しばし悩んでしまいます。どうも肩の力を抜いて楽に書いているようにしか思えません。

実は、この「天下一武道会」的展開は、過去にも同じ展開があります。その時は、豹の頭を持つ異形の戦士が一国の王に成り上がって行くために必要な展開で、非常に楽しいエピソードでした。ただ、今回はさっさとここを飛ばしてもあまり支障がないように思うので、明らかに寄り道です。作者が自分の作ったパターンを繰り返すのは、悪いことばかりではありません。しかし……。

こういう釈然としない思いを飲み込みながら、ますます先が見えないグインサーガ。完結したら一巻から読み直そうと思ってますが、果たして、その日は来るのでしょうか?

タイスの魔剣士・グイン・サーガ111>AMAZON
読書ノート評価:55点
短評:何度も書いてますが、20巻ぐらいまでは本当に重厚な小説でした。あえて言えば、最近の展開は、「いもたこなんきん(NHK朝ドラ)」みたいです。
# by kyura130 | 2007-01-25 19:22 | 小説/読物
神鳥―イビス/篠田節子(集英社・570円)
この世はこの手の怨念だらけでは

atomさん「テレビゲームあれこれ日記」に頂いた一冊で、ジャンルはホラー・サスペンス。最近はっきりと自覚するようになりましたが、僕はこのホラー・サスペンスというジャンルがかなり好きです。生来の怖いもの見たさ的性格というか、ホラーだけならむしろ嫌いなのですが、サスペンスがつくと途端にのめりこんでしまいます。

本作品の大筋は、古典的な怨念モノのプロットをたどります。但し、道具立ては、「変死した女流画家が書いた絵の謎」「その謎を追った人間はことごとく発狂」、そして行き着く「村人が消えた村」と、まさにサスペンス好きのツボをつく魅力的なもの。特に「過去の惨劇」の設定には無条件に反応してしまいます。と、言うわけで、謎解きがされる後半まで、ワクワクして読みました。

一方、キャラクターの造形は非常に個性的でした。何しろ主役の二人が、32歳の美少年専門イラストレーターと、禿げ気味で太ったエロ&バイオレンスを得意とする流行作家という設定です。あえて言えば、普通は絶対ありえないアンチ・ヒーロー像です。作者の他の作品は知りませんが、この辺に強いこだわりがあるのでしょうか。ユニークすぎて共感はできませんが、とにかく「ありきたりでない」という点を評価したいと思います。

個人的な難点は、作者の恋愛観が生々しすぎることです。現実にはあるのかもしれませんが、男性側から見ると、女性の身も蓋もない述懐はちょっと辛いものがあります。男性の場合、どうしても根幹で女性を女神化している部分があるので、こちらの方がリアルなのですが、もう少し、美しく書いてあげて欲しかった。

物語の肝であるネタには、賛否両論があるかもしれませんが、サスペンスはミステリーと違い、種明かしまでの過程が楽しいもの。そういう意味では十分楽しめる作品です。文章の読みやすさも大きなプラス点。とにかく最後まで読ませるパワーは感じました。

神鳥―イビス>AMAZON
読書ノート評価:60点
短評:この本に出てくる女性画家がフィクションなのが残念。絵が頭に浮かぶだけに、実際に見てみたかった。表題の意味は本を読めばお分かり頂けると思います。ニホンオオカミやリョコウバト、ドードーでも書けそうです。
謝辞・陳謝:atomさん面白いサスペンスをありがとうございました。そして、間違えて本当にごめんなさい。
# by kyura130 | 2007-01-23 00:31 | 小説/読物
パタリロ! (1)/魔夜峰央(410円・白泉社)
自分のギャグセンスのベース

冗談を全く言わない人はいないと思いますが、駄洒落にしろ、若手芸人のネタにしろ、父親の影響にしろ、何かしらその人特有の冗談のパターンがあり、その元となったものもあるはずです。大抵、いくつかの「お笑いの素」が長い時間をかけて煮込まれ、その人特有の「下らない話」になっているのではないでしょうか。心底どうでもいい話ですが、この「パタリロ!」にこち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)とドリフターズのコントの3つが僕のギャグセンスのベースです。はい。

「パタリロ!」は非常にベタなお笑いと、きちんと落ちのつくストーリー展開(特に初期は切れのある物語が多い)、そして、男性の同性愛が大胆に語られるという点が特徴で、西洋浮世絵風と呼ばれる平面的で独特な絵柄も相まって、一度見ると忘れられないインパクトがあります。今の少年少女は知らないかもしれませんが、絵柄もストーリーも忠実にアニメ化もされており、こちらも非常にいい出来です。

ただ、僕の印象では「パタリロ!」は第17巻辺りから物語性が薄れるというか、パタリロの毒が強くなりすぎてくると言うか、その辺で違和感を感じて脱落しました。45巻や60巻なども散発的で買って読んだこともありますが、やはり初期に比べると苦味が増してきている気がします。どちらにしても、79巻も刊行されていること自体、凄いことだと思いますが。

僕の好きな話は初期に限られますが「化学騒動」や「パタリロ8世と10世」、「旅立てジャック」などでしょうか。いつもの調子で大真面目に語っていますが、要はいい意味のアホ漫画ですので、肩の力を抜いて、ダラダラ読むのが正しい接し方と言えるでしょう。そして、パタリロのクックロビン音頭が出たら、心の中でバンコランと一緒に踊るのが正しい読書スタイルです。

ちなみに同じ作者の「妖怪始末人トラウマ」や「ラシャーヌ」などもお薦めです。でも、嫌いな人は1Pも受け付けないと思われるであろうこの作品、皆さんはどうでしょうか。

パタリロ! (1)>AMAZON
読書ノート評価:70点(ベタなギャグが好きな人なら)
短評:あと、僕のギャグベースはさだまさしのMCや鳥山明、ダウンタンやいがらしみきおの漫画など、自分で書いていて「この人の冗談はできれば聞きたくない」と思えるようなミックス具合です。冗談を言うのは大好きですが……。
# by kyura130 | 2007-01-16 22:15 | コミック
陽気なギャングが地球を回す/伊坂幸太郎(660円・祥伝社)
伊坂氏の持ち味がさらに熟成

「オーデュボンの祈り」「ラッシュライフ」に続く伊坂氏の第3作であり、順を追って読んでいるので僕もこれが伊坂作品の3作目となります。昨年映画化もされたので結構メジャーな作品だと思いますが、タイトル通り4人(+2)の陽気な銀行強盗の襲撃とその顛末が描かれています。

これまで伊坂氏の作品を読んで感じた特徴は、(1)軽妙・洒脱な会話劇、(2)物語のラストで伏線が一気に収束、(3)登場人物が一部現実離れした個性を持つ、(4)作品の相互リンク、(5)物語に含まれる寓話性、(6)確信犯的に衒学趣味な所がある、などです。本作品では、特に(1)の会話劇が抜きん出ていたと感じました。「難しく考えずに主人公たちの会話を楽しんでください」という伊坂氏のスタイルが良くわかりました。

逆に言えば、伏線の収束や物語の意外性では、前作・前々作の方が複雑でした。どちらがいいと言うことは一概に言えませんが、作品が進むにつれて、より読み口がマイルドになっており、僕は伊坂「ワールド」と称される作者の世界観がより明確になってきていると思いました。作品の登場人物や事件が相互にリンクしているのは、京極夏彦氏の「京極堂シリーズ」にも似て、作を追うごとに読者側に世界観が蓄積されるので、より深くハマれるという仕組みも好みです。

本作には、人の嘘を見抜く名人「人間嘘発見器」こと成瀬という冷静沈着で知的なキャラクターが登場するのですが、これに弁舌の名人、陽気なスリの達人の3人を合わせて、伊坂氏の理想の男性像が現れていると思いました。「真剣にふざける」という価値観が貫かれていて、好き嫌いはあると思いますが、僕も徐々に伊坂ワールドの住人化してきています。次の「重力ピエロ」も楽しみです。

※本作品は、yurinippoさん(おうちしごと日報)より頂きました。楽しい読書タイムを本当にありがとうございました。

陽気なギャングが地球を回す>AMAZON
読書ノート評価:73点
短評:途中、ちょっとしたアクションシーンもあるんですが、ここが痛快で好きです。現実だったら結構シリアスな問題だと思いますが。
# by kyura130 | 2007-01-13 23:40 | 小説/読物
草小説とは何ぞや?
数日前、いつもお世話になっていますyurinippoさん(おうちしごと日報)より、僕がコメントで書いた「草小説」に、「それは何ぞや」というご質問を頂きました。一応僕としては、「自分では楽しんで書いているし、できたものには満足しているが、プロのレベルには遠く及ばない小説」というようなもの(要するに個人が書きなぐった小説)と考えていますが、言葉だけでは、説明しづらいので、「これが草小説だ!」と言うものを下のブログに掲載してみました。と、いうか書きたかっただけです……。

草小説KY 「夜の雲、音のない渚」
※投稿日の早い方が先のお話になっています。原稿用紙換算20枚ちょっとの短編恋愛(風)小説です。

普段はドンパチする派手な小説を書くのが好きなのですが、たまにこういう地味な話も書きたくなり、数年前に書いたものです。変形版「ゴースト」というか、ややファンタジー。お互いにはっきりと意思表示しない(できない)恋愛関係って好きなんです。ぱっと思いつくのが、「X-FILES」のモルダーとスカリーなので、恋愛小説の腕は推して知るべしなレベルです。

僕だけだと今後更新されない可能性もありますので、投稿も募集したりします。我こそは! と、思う草小説プレイヤーは、ぜひ、kyura130@gmail.com までご投稿下さい。気長にお待ちしています。
# by kyura130 | 2007-01-11 23:37 | 雑談
サイレントヒル/クリストフ・ガンズ監督(060708公開)
ゲーム好き監督による愛のあるホラー

今年から方針転換をして映画なども紹介してみたいと思いますが、余り映画館には通えていないので、DVD鑑賞中心になると思います。僕は先ごろ正式に4の製作が決定したインディ・ジョーンズの2作目「魔宮の伝説」で映画に目覚めたので、好きなジャンルはやはりメジャー・アクションが中心です。一方で、本と同じく、あまり残酷すぎないサスペンス系の映画も好みです。

今回紹介するのは、ホラー・サスペンス映画の「サイレントヒル」です。これは元々コナミが発売したPS用ゲームがベースになっており、監督もゲームを遊んでその世界観に惚れこんで映画を作り上げたと言う一品。物語は、謎の地名「サイレントヒル」を口にする夢遊病状態の娘を救う為、母親(ラダ・ミッチェル)がその「サイレントヒル」に向かい、哀しくおぞましい過去を知る……と、いった内容です。

ゲームは遊んだことがないのですが、僕がどうしても見たいと思った理由は、そのサスペンスな雰囲気に惹かれたからです。大火事があったという謎の街に空から振る真っ白な灰、鳴り響く不気味なサイレン。サスペンス好きとしては、もうこれだけでワクワクします。後半は、オカルト・ホラーよりになってしまうのが残念ですが、少なくとも途中まではリアリティも維持している点も好みです。

「過去の大惨事」はこの手の映画に重みを持たせる定番ですが、まずまず機能しています。気になったのは、あまりにゲーム的な場面がいくつかあること、また、後半の無意味なスプラッター描写です。ゲーム的なのはゲームが原作なので仕方ないのですが、アイテム探しとかもいかにもといった感じ。クリーチャーデザインもゲームっぽいです。また、ラスト近くの残酷描写もさらっと見ましたが、こういうものだと分かってないとショックが大きいでしょう。悪名高い「グリーン・マイル」の電気椅子シーンを髣髴とさせる場面もありますのでご注意を。

ただ、全体としてはまとまった内容で、途中で飽きることもありません。最後まで合理的な説明があれば尚嬉しかったのですが、そうなると地味になりそうですし、雰囲気を楽しめる及第点のサスペンス・ホラーではないでしょうか。

<サイレントヒル>
読書ノート評価:64点
短評:ラダ・ミッチェルも悲しいヒロインを好演。相棒の女警官もいい味出してました。その割には、ラストがかわいそう過ぎますが、「味方はいない。母さん、見守っていて」の台詞が記憶に残りました。
# by kyura130 | 2007-01-09 22:33 | 映画
ゼルダの伝説トワイライトプリンセス (Wii・任天堂・6800円)
貫禄の完成度とゼルダの限界

さて、ゲームノートKYをこちらに統合しましたので、さっそくゲームの紹介もしていきたいと思います。一応、スタンスとしては、ストーリーなどにこだわってレビューしていきます。

さて、記念すべき紹介の第1作は、今や任天堂の顔である「ゼルダの伝説」最新作「トワイライトプリンセス」。僕も思い入れの深いシリーズで、1986年に発売された第1作の感動は、昨日のことのように覚えています。

「ゼルダ」シリーズの面白さは、やはり「謎解き」です。限られた状況の中で、最大限操作を工夫して、先に進むヨロコビ、これに尽きます。「トワイライトプリンセス」でもそれは健在で、おなじみの「明かり灯し」といったアクションから、新アイテム「スピナー」による斬新なアクションまで、非常に多彩。お腹一杯楽しめます。

もう一つの魅力は、切なさを含んだストーリー展開にあります。ゲームのストーリーとしては、僕は「ドラクエⅤ」がベストワン、続いて「タクティクスオウガ」、その次点が「ゼルダの伝説 夢を見る島」で、シリーズ全体でも「ないようである」ストーリーを評価しています。主人公のリンクは、いつもどこか異邦人であり、事件を解決してもそこにとどまらず去っていく人なので、そこに悲しみがいつも伴う点がポイントです。

本作では、ミドナという小悪魔的なキャラクターが非常に重要な役回りで、リンクの相棒として活躍します。グラフィックが進化し、目で演技するようになっていますので、微妙な感情の揺れが楽しめました。欲を言えば、もっと最初は敵対していても良かったと思いますが、徐々に打ち解けていく様子は感動でした。ミドナは例えて言うなら、ルパン三世に対する「銭形のとっつぁん」的な役回りでしょうか。

ただ、全体としてみると、マンネリ感があるのも否定できません。Wiiが「これまでのゲームの進化の方向を外れる」ゲーム機であるとすれば、ゼルダはまさしく「これまでのゲーム」な訳で、すでにNintendo64の「時のオカリナ」で完成していたゲームシステムの正統進化版といった内容です。安心して遊べましたが、あの第1作目のテーマ曲が流れた瞬間の痺れるような感動、「新しい時代が始まった」感じは残念ながらありません。

ゲームはいつもグラフィックやストーリーだけでなく、システムの進化も求められます。その点で本作は「あえてシステムの進化を求めず、物量と質の向上」を目指した作品だといえます。その為、安心感はありますが、何か一つ足りない物足りなさが残ります。絶えず前作を超えることを求めるのは、酷ではあると思いますが。

最後まで遊んでみて、満足感は80%というところでしょうか。Wiiの中では意外に売上げで苦戦していますが、システム・操作感・音楽・キャラクター・物語・物量の全てか高レベルで融合した良作なので、Wiiを買われたらぜひ一度プレイしてみてください。

<ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス>
読書ノート評価:79点
短評:個人的にはヒロインが、ゼルダ、ミドナ、イリアと分散してしまったのが痛い。特にイリアの扱いが微妙です。ミドナに絞ってもよかったのでは。
# by kyura130 | 2007-01-06 23:32 | ゲーム
動物のお医者さん(第1巻)/佐々木倫子(590円・白泉社)
楽園漫画の代表格

年末年始に再読していたのは、なぜかこの作品でした。Wikipediaによれば、合計2000万部も売っているらしく、ドラゴンボールなど国内で1億2600万部を突破した作品と比べても、遜色の無い部数です。作品の面白さとは関係ありませんが、一話完結型のコメディーと考えると驚異的な売上げではないでしょうか。

作品内容は、獣医をめざす大学生を描いた柔らかい感じのコメディーで、肩の力を抜いて楽しめます。他の作品に無い魅力は、何といっても登場人物の雰囲気が暖かさがありながら妙にクールな所です。それは多分、作者は「恋愛は書かない」とあとがきで触れていましたが、学生生活なのにほとんど恋愛要素が無い為ではないでしょうか。また、過剰な感動シーンもありません。「花とゆめ」という少女マンガ誌に掲載されていたことを考えると、恋愛要素を封印するというのは、個人的にはかなり驚きです。

ただ、そのおかげで、僕のような男性読者への敷居も低く、年代や性別を問わずに受け入れられていると思います。僕が勝手に名付けているジャンルですが、この作品は「楽園漫画」に属すると思います。僕の定義では「楽園漫画」は、(1)読んでいてストレスが無い、(2)何度も読みたくなる、(3)ずっと浸っていたい世界観がある、(4)キャラクターに愛着が湧く、(5)過剰な演出が無い……などです。この作品は、まさにこの5点を満たしていますので、お薦めです。

余談になりますが僕が公式認定(?)している楽園漫画は、「ぼのぼの/いがらしみきお」ぐらいでしょうか(元THE YELLOW MONKEYの吉井和哉氏が帯びに「楽園に行こう」という推薦文を書いてました)。惜しいのは、「パタリロ」や「蟲師」といった作品です。恐らく続編がかかれることは無いと思いますが、欲を言えば「動物のお医者さん」は永遠に続いて欲しかったです。

最後にお薦めのエピソードは、「犬ぞり」「馬の世話」「牛の出産」とかでしょうか(お話にタイトルがナイ)。ちなみにドラマもありましたが、そちらは微妙な感じです。そうそう、アニメ「サザエさん」とかも「楽園」シリーズ(?)に該当するような雰囲気ですね。

動物のお医者さん(第1巻)>AMAZON
読書ノート評価85点
短評:「食器やお菓子を早く片付ける」という小夜ちゃんがお気に入り。そういえば自分もそうかもしれません。
# by kyura130 | 2007-01-06 21:32 | 小説/読物
今年もよろしくお願いします。
年末年始はバタバタしていて、すっかり更新が滞ってしまいましたが、2007年もマイペースで続けていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

僕の場合、小説の読書、コミックの読書、ゲーム(DSやWii)、料理の作成、草小説(?)の執筆、自転車のツーリング(春夏)、インターネットの閲覧が、仕事と子育てを除く自由時間をシェアしていますので、今年は、別ページのゲームノートも統合し、「余暇に使った娯楽のレビュー」という方針に改め、近状など、日記風の文章も入れて行こうかなとも思っています。

何はともあれ、2007年が皆さんにとって良いとしてでありますように。そして、楽しい作品にたくさん出会えることを願っています。

「読書ノートkY」改め「読書ノートKY+S(something)」管理人 kyura130


# by kyura130 | 2007-01-01 21:33 | 雑談
今年一年ありがとうございました。
今年、当読書ノートKYに何度も来て下さった方、一度だけのぞいて見た方、たまたま迷い込んでこられた方、とにかくアクセスありがとうございました。

12月は、Wiiを買って読書をサボってましたのが、年明けからはまた通常ペースに戻したいですね。さらに更新ペースの遅いゲームノートも統合し、来年は身辺雑記なども書いていきたいなと思ってます。

それでは、2007年が皆様にとって良い一年でありますように。

(明日から帰郷しますので少し早めのご挨拶でした)

読書ノートKY 管理人 Kyura130
# by kyura130 | 2006-12-29 16:31 | 雑談
ブレイブ・ストーリー (上)/宮部みゆき (700円・角川書店)
愛すべきゲーム世界へのオマージュ

私事ですが、任天堂のWiiを買って以来、「ゼルダの伝説トワイライトプリンセス」ばかり遊んでおり、読書時間がほとんどそれに吸い取られている状態。本来なら、この作品も下巻まで読んでから感想を書こうと思っていたのですが、余りにサボり過ぎてますので、取り合えず上巻の感想をアップしたいと思います。

奇しくも、宮部氏は「ゲーム女」を自称されているくらいのゲームファン。PS2のゲーム「ico」をノベライズしたり、公式ブログではゲームの話題をよく取り上げたり、かなりその道の人です。本作「ブレイブ・ストーリー」は、そんな宮部氏が愛するファンタジーゲームの世界を舞台にした作品になっています。形式としては、「ナルニア国物語」と同様の現実の世界とファンタジー世界がクロスオーバーするタイプで、指輪物語などの完全な異世界物とは異なります。

さて、上巻では、主人公の少年の境遇が非常に丹念に描かれています。ちょっとおませで大人ぶる所もあるけど、心優しい小学生の日常が皮膚感覚とでも言うべきリアリティをもって再現されています(あくまで大人が見た世界かもしれませんが)。その後、ファンタジー世界へと進むわけですが、大人の世界と子どもの世界という二つの世界の対比があり、第3の世界としてのファンタジー世界がどう関わってくるのか、非常に興味深いです。

上巻では、溜めれるだけ溜めたフラストレーションが旅立ちへの心理的きっかけになっていますが、その描写がかなり残酷です。対して、異世界の描写は、「ファンタジーRPG」の王道というか、かなりベタなものです。現代的な家族のドラマと思い切りゲーム的ファンタジーの世界の同時進行。どちらか一つだけだとここまでメジャーな作品にはならなかったとは思いますが、この二つをつなげた所が宮部氏の宮部氏たるゆえんではないでしょうか。

率直に言うと「前振りが長いなあ」とも思いましたが、これは上中下合わせて一つの物語なので、全体の構成からすると、導入部も至極真っ当な分量かもしれません。何はともあれ、思い入れたっぷりに描いた上巻を抜けて、中巻に進んでいますが、上巻の「貯金」がどのように使われるのか、楽しみに読んでいます。
(評価は、下巻まで読んでからしてみたいと思います)

ブレイブ・ストーリー (上)>AMAZON
読書ノート評価:(下巻にてまとめて行います)
短評:宮部氏のゲームへの愛情を感じます。文中には実名のゲームも出てきてリアルです。
# by kyura130 | 2006-12-19 21:40 | 小説/読物
祝&御礼・椎名SF三部作ハードカバー版収蔵
atomさんより、yurinippoさん経由で椎名SF三部作のひとつ、「水域」のハードカバー版を頂きました。お二人には、ここに謹んでお礼申し上げます。写真のように我が家の本棚に収蔵させて頂きました。末永く大切にしたいと思います。

(「椎名棚」に収まった三冊)今回は撮影用に上のグインサーガの棚に載せました。ちなみにその下の棚は「はじめの一歩」、上は「魔界水滸伝」などが収まってます。

せっかくですので、簡単にSF三部作を紹介します。

「アド・バード」第11回日本SF大賞受賞の椎名SFの代表作。「広告戦争」が起きた近未来での冒険を、驚愕のイマジネーションで鮮やかに描きます。僕は独特の言語世界やユニークなキャラクターなどに魅せられました。密かに冒険型椎名SFの魅力だと感じている「怪しげな場所の探索」もたっぷり味わえます。atomさん一押し。

「水域」こちらは水没した未来世界を舞台に、一人の孤独な男の冒険が描かれます。船やカヌーなどの実体験がある椎名氏だからこそ可能なリアリティある船の旅が展開されます。僕の記憶の中でも屈指の美しい風景のラストシーンが絶品。他の二作に比べると、独自のガジェットなどが少ない分、読みやすさは一番です。yurinippoさん一押し。

「武装島田倉庫」未来に起こったある戦争のせいで荒廃してしまった世界の中で、男たちのハードな「仕事ぶり」が描かれます。椎名氏の労働体験やSFの知識、言語感覚などが高度に融合し、他にはない世界が展開しています。悲惨な荒れた世界で、悲観もせず、楽観もせず、ただ淡々と仕事をこなす姿はウツクシク、そして感動的ですらあります。詳しくはこちらのレビューで。僕、kyura一押しです。

まだ、お読みでない方は、どれからでも大丈夫ですので、ぜひ、ご一読下さい。豊潤なイマジネーションの中での充実したひと時が過ごせると思います。
# by kyura130 | 2006-12-08 21:49 | 雑談
アマニタ・パンセリナ/中島らも(480円・集英社)
ダークな好奇心を一杯に満たしてくれる

この本を読む前にはおそらく、「ドラッグと名のつくものは、効果の過多、依存性、合法・非合法に関わらず絶対に手を出さない」という前提が必要だと思います。「酒もドラッグだ」と、言われると僕としても結構辛いものがあるのですが、少なくとも脱法ドラッグには関わらないという決意が必要です。

さて、本作品は単純に大変面白い本です。何しろ、大麻や阿片、覚せい剤から睡眠薬、果ては幻覚キノコまで、生粋のエンターテイナーであるらも氏の「実体験を含めて」面白おかしく(そして哀しく)ドラッグが語れており、読書の止めどころが分からなくなります。

何しろ、「効く」と噂の幻覚サボテンを自宅で栽培し、それを薄切りにし、天日で乾かして、煎じて飲んでみたらも氏。さて、その効果はいったい……!? こんな話が面白くないわけがなく、一種の突撃体験モノにもなっています。

僕自身、咳止めシロップを乱用している現場を見たことがあり、その効果に興味はあっても、自分で試してみることは到底できませんでした。そうした「いけない好奇心」を刺激される、大人の為の楽しい読み物です。

ただ、ご存知の通り、らも氏は酩酊して階段から落ちて亡くなっており、本書でも「自分は酔って階段から落ちて死ぬだろう」ということを書かれています。本当に残念なことですが、そういったらも氏の生きざまが、弱者に対する共感的な暖かい視点となって現れており、ただの興味本位のエッセイに終わっていないのはさすがでした。僕の感想を一言で言うと「おもろうて やがてかなしき クスリかな」です。

アマニタ・パンセリナ>AMAZON
読書ノート評価:75点 
短評:とにかく面白かった! らも氏の著作にはまだまだ興味深いものがあるので、また探してみたいです。
# by kyura130 | 2006-11-27 21:34 | 小説/読物
ラッシュライフ/伊坂幸太郎(660円・新潮社)
完成された作風に感嘆

いつもお越し頂いているyurinippoさん(おうちしごと日報)より、送って頂いた一冊。伊坂作品は、デビュー作「オーデュポンの祈り」以来の2冊目です。

前作を読んで、作者が非凡な個性と才能を持っていることはよく分かりました。しかし、同時にその才気に疑念があったのも確かです。上手く言えませんが、「小説が上手すぎて逆に覚めてしまう」ような読書感が多少あったからです。正直に言うと、本作も途中までは、結構疑っていました。また、煙に巻かれるのではないかと。

すみません。それは全くの杞憂でした。主に5つのストーリーが交錯するお話なのですが、ラスト付近になって、ページを繰る手が止まりませんでした。前半で、不愉快なシーンもあったのですが、それぞれちゃんと意味があってつながっていく面白さ。張られた伏線が次々回収されていく心地よさ。そして、最後にはちゃんと言いたいことも伝わってきます。非常に良くできています。

この作品を読んで思い出したのは、映画「マグノリア」で、あれはラストが凄いことになってましたが、「ラッシュライフ」は誰もが納得でき、カタルシスも十分なラストだと思います。また、ポップスで言えば、僕の愛するスピッツにも似ていて(ファーストアルバムから完成された世界観と音楽)で、妙に親近感も沸きました。ありえない偶然や設定もありましたが、そういうことも込みで愛せる作品ではないでしょうか。

何より嬉しいのは、作者が小説を愛しているのが良くわかったことです。僕も本当に何かちゃんとした小説を書きたくなりました。この後の著作も世界観を微妙に共有しているらしいとのこと、ぜひ読んでみたいと思っています。

ラッシュライフ>AMAZON
読書ノート評価:83点 
短評:泥棒の黒澤さんも好きですが、犬と中年男性のエピソードがいいですね。そうそう、ラストを読んでアニメ映画「東京ゴッドファーザーズ」も思い出しました。クリスマス時期にぴったりのいい作品なので、機会があればぜひDVDでどうぞ。
# by kyura130 | 2006-11-26 21:56 | 小説/読物
【付録】これまでに紹介したホラー・サスペンスの紹介
ホラー・サスペンスの紹介を一通り終えましたが、折角ですのでこれまで紹介した作品も簡単に紹介したいと思います。

夏の滴/桐生祐狩
~かなりのトンデモ系
子どもたちの視点で描かれたスタンド・バイ・ミーのようなノスタルジーなストーリー……を想像して読むとずっこけます。グロ的描写、近親相姦、何でもありで驚愕の結末を迎えます。思わず笑ってしまうくらいです。
読書ノート評価:55点

呪怨/大石圭
~当然のように現れる霊に失笑
映画版はアメリカでリメイクもされ、、公開当時、日本人監督の作品としては歴代1位の興収を挙げた傑作。しかし、小説としてはかなり痛い出来栄え。霊がひょっこり現れる描写に、しばし、本を閉じて、「うーむ」と唸りました。
読書ノート評価:30点

隣の家の少女/ジャック・ケッチャム
~最凶の不快感

昨今、いじめや幼児虐待の暗い影が広がっていますが、少女に対する虐待をネチネチと克明に描いた不快感たっぷりの小説です。読後感も酷い。ただ、救いは虐待側も虐待によって深い罪を背負う所でしょうか。娯楽としては余り薦められません。
読書ノート評価:75点(強烈な読後感に)

ブラジルから来た少年 /アイラ・レヴィン
~正統派SFサスペンス

atomさん(テレビゲームあれこれ日記)にお薦め頂いた一作。第三帝国の陰謀がサスペンスフルに描かれる正統派のサスペンスです。不気味感がじわじわこみ上げてきます。
読書ノート評価:50点

バトルロワイヤル/高見広春
~リアルな学生感覚が売り!?

発表当初は各方面で物議を醸した問題作……と、言うほどでもなく、中学・高校生ぐらいの感覚で書かれた純粋娯楽作品。クラスメイトのサバイバルを愚直に描写しており、これはこれでありかと思わせるパワーあり。ただし、やはりどこかお笑いに……。
読書ノート評価:50点

覘き小平次/京極夏彦
~変人達の不思議な秩序
硬質な文体で描く、「世界からはみ出してしまった者」の悲哀を描く作品。一見、変人な主人公をトコトン苛めているように見えますが、むしろ暖かいと言える視点が隠れています。エンターテイメントとしても満足できる作品です。
読書ノート評価:60点

ローズマリーの赤ちゃん/アイラ・レヴィン
~モダンホラーの元祖的存在
こちらもatomさんに薦めて頂いた一作です。映画版も有名で、僕も名前は知ってた作品です。キリスト教的要素のあるモダンホラーですが、この手のジャンルの元祖と言われているだけあり、しっかりとした作りになっています。外国ではやはり悪魔が恐怖の対象なんですね。
読書ノート評価:65点

岡山女/岩井志麻子
~幻想的な雰囲気が魅力
先日紹介した「ぼっけえ、きょうてえ」の岩井志麻子氏の作品。グロテスクさはほとんどなく、幻想的なムードで霊にまつわる物語が語られます。独特の雰囲気を気に入れば、まずまず楽しめます。いまひとつ、インパクトも足らないのですが。
読書ノート評価:55点

死の泉/皆川博子
~何が書きたいのか良く分からない
この間読んだ中で、一番、僕の評価が低かった作品です。ナチスの人体実験など、思い切ったテーマを取り上げながら、絶えず輪郭がぼやけて進行する物語は、正直、かなり読みにくい内容です。オチも納得いかないので、こんな点数です。
読書ノート評価:30点

以上、ずらっと並べてみましたが、結構、こういう話が自分でも好きなんだと改めて思いました。サスペンスな展開が上手くハマったときの快感を求めて、今後もこのジャンルを探求していきたいと思います。「怖い」「面白い」作品でお薦めがあれば、ぜひ、ご推薦下さい。
# by kyura130 | 2006-11-19 11:00 | 雑談
魔法の水/編集・村上龍(504円・角川書店)
豪華だが真剣勝負ではないオールスター戦
~'06秋のホラー・サスペンス特集(10)


村上龍の編集した複数作家による短編ホラー集です。とにかく、作家陣が豪華です。村上氏自身を始め、村上春樹、山田詠美、椎名誠、原田宗徳、景山民夫、森瑤子、連城三紀彦、吉本ばななという錚々たる顔ぶれです。ただし、書下ろしは景山民夫氏のみで、他の作家はすでに発表済みの短編から集められています。

僕も連続でホラー・サスペンスを読んでみて「恐怖とは何か」を考えさせられましたが、やはり根本は消滅=死の恐怖だと思いました。人間が不快に感じることは、悉く死につながっており、その度合いが強いほど恐怖心という危機回避本能が働くのではないでしょうか。ホラーやサスペンス小説は、安全が保障された場所から、死を覘き見る興味、生と死のギャップを楽しむ物なのかな、と思います。

この一冊は、短編ホラー集とは銘打ってますが、非常にホラーの捉え方が多彩、あるいは曖昧です。僕の基準でホラーだと思うのは、一風変わった学校の怪談を語る「鏡/村上春樹」、物に憑いた怨念が引き起こす悲劇「植えたナイフ/原田宗徳」、霊視者の困惑をややコミカルに描写する「葬式/景山民夫」ぐらいです。一方、サスペンス的な要素が濃いのは、官能的な雰囲気で記憶喪失の謎が語られる「ひと夏の肌/連城三紀彦」、エレベーターでの密室劇「箱の中/椎名誠」、過激なSM倶楽部の恐怖を描く「ペンライト/村上龍」です。

残り3名は女性作家ですが、「桔梗/山田詠美」は大人社会の恋愛模様を哀しみを持って見つめた内容ですし、「海豚/森瑤子」はイルカを食べたことに対する罪悪感の記憶、「らせん/吉本ばなな」に至っては、完全にいつものばなな節の恋愛小説です。

「ペンライト」などは、村上氏の作風である非常に不快&えげつない表現がありますが、全体的にそれほど怖くはありません。それぞれの作家は一時代を築いた方ばかりなので、決して途中で投げ出すほど退屈ではありませんが、かといって最高の作品と言うわけではなく、せいぜい「ホラー入門」と言った位置づけではないでしょうか? その作家のファンなら興味深く読めるかも知れません。

ところで、意外と恐ろしい恐怖が「退屈」だと思うのですがどうでしょうか。誰にも相手をされず、自分でやりたいことも、興味も無い。これって、死そのものだと思うのですが……今後もそういう恐怖的小説に出会わないことを願っています。
('06ホラー・サスペンス特集・了)

魔法の水>AMAZON
読書ノート評価:55点 
短評:それぞれ作風は全く違いますが、作品のクオリティで言えば、綺麗に揃っている気もします。でも、吉本ばなな氏の小説をホラーでくくるのは無理がある気が……。
# by kyura130 | 2006-11-18 09:54 | 小説/読物
ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子(480円・角川書店)
できれば読まなかったことにしたい
~'06秋のホラー・サスペンス特集(9)


あちこちの書評で「怖いホラー小説」の話題になると、必ず選ばれているのが、この「ぼっけえ、きょうてえ」です。意味は、「凄く怖い」ということらしいですが、表題作に関しては、僕も噂どおりの逸品だと思います。

怖さにも色々種類があると思います。「亡霊」や「妖怪」など未知なる何かに感じる恐怖、人間の心の闇や悪意に感じる心理的な恐怖、災害や事故に感じる不安感と重なる恐怖、癌や奇病など自分の体が犯される恐怖、拷問など身体的な痛みを感じる恐怖、残虐な殺戮や血に感じる恐怖、戦争など集団的な狂気に怯える恐怖……。

そんな中で、「ぼっけぇ、きょうてえ」は、感覚的な恐怖や視覚的な恐怖、グロテスクな表現でジワジワ追い詰められて、最後にいきなり「気持ち」を突き刺されるような、そんなテクニカルな恐怖を味わえます。この鮮烈さは特筆物で、鋭い刃物で切りつけられるようです。何を書いてもネタバレになるので、まずは一度読んでみてください。

本作品は色々現代的なアレンジがされていますが、骨子は伝統的な怪談で、どこかで聞いたことがあるような話です。ただ、岡山弁での語りが巧みで、気がつくと文章に飲まれているように感じます。ちなみに、表題作以外の他の3編も、悪くはないのですが、傑作と言える表題作に比べると、やはり一段落ち、二段落ちの内容だと思います。

どこかで、「もうこの本を読みたくないどころか、表紙に触りたくもない」という感想を読みましたが、僕もそう思います。「できれば忘れてしまいたいような怖い話」なんて、実体験以外では、中々ありませんので、ホラーファンは必読です。

ぼっけえ、きょうてえ
読書ノート評価:70点 
短評:全部が表題作のクオリティなら90点をあげたいです。逆に言えば、表題作ならホラーとして文句なしの85点をあげたいです。今、思い出してもキモチワルイです……。ホラー特集は次回で一応終わります。(評価が無かったので修正しました)
# by kyura130 | 2006-11-17 00:14 | 小説/読物
死国/坂東真砂子 (567円・角川書店)
最後は痴話喧嘩ですかーっ!?
~'06秋のホラー・サスペンス特集(8)


タイトルもネタバレ気味で悩んだのですが、今回は少々結末にも触れて感想を書いてみたいと思いますので、読まれる予定がある場合は、読み飛ばしてください。一応、本の裏の紹介から想像できる程度の紹介ですので、大丈夫だとは思いますが、念のためお断りします。

例の「猫殺し」の一件で話題の坂東氏による映画化もされたこの「死国」は、死者の甦りと四国の土着文化をテーマにしており、文庫本では「伝奇ロマン」と紹介されています。問題は、この伝奇とロマンの比重なんですが、僕の読んだところ「ほとんどロマン」といった感じで、三角関係がテーマの恋愛物です。

ただ、この三角関係の一角が死人という点がこの本の売りだと思うのですが、正直、僕が読みたかったのは、ドキドキするサスペンスで、女性の愛憎渦巻く恋愛物ではなかったので、見事に肩透かしを食らった感じです。おまけに、「霊魂が存在する」ことが前提になっているので、亡霊・霊魂の存在に懐疑的な僕としては、リアリティを失ってファンタジーにも思えました。

死者の甦り系のお話として、「猿の手」という古典的なお話があるのですが、基本的に甦り物は、死者への切ない思いと死者への冒涜行為が交錯して悲劇的な結末を生む、というのが基本的なプロットで、多かれ少なかれこの流れで展開すると思います。この「死国」も、そういった要素もありますが、甦った死者が取った行動が「ヒロインとの男の取り合い」な所が、トホホ感いっぱいで、「けっきょく痴話喧嘩かよっ!」と、思わず突っ込んでしまいました。

また、女性作家と男性作家による恋愛観の違いを感じた作品でもありました。男性作家は、どこかで女性を女神化・偶像化することが多いのですが、女性作家の場合、ことさらに内面の醜さやあからさまな性的欲求を描写することが多い(この間読んだサスペンスでは特に)と思います。その象徴が、女性の登場人物の喫煙率の高さだと思いました。どちらがいいという問題ではないのですが、僕自身、嫉妬心や性的なモノローグに何か居心地の悪さを感じる描写も多かったです。

もう一つの売りの四国の土俗的文化についても、それほど突っ込まれておらず、中途半端感は否めません。期待して読んだだけに、どうにも人に薦めにくい一冊というのが今回の感想です。好んで始めたサスペンス特集ですが、今回の読書感もあって、そろそろスカッとした話も読んでみたくなってきました。

死国>amazon
読書ノート評価:35点
短評:逆に女性作家が描く男性像というのも結構似通っているような気がします。オタク的な男性とかは、絶対出てきませんよね。
# by kyura130 | 2006-11-11 18:42 | 小説/読物
あくむ/井上夢人(510円・集英社)
ふと迷い込むトライワイトな空間
~'06秋のホラー・サスペンス特集(7)


目が覚めると、全身が動かず、おまけに目も見えない。医者の説明によると、全身複雑骨折で、失明までしているという。自分でも事故にあった記憶はある。しかし、本当にそんな大怪我なのだろうか。痛みは感じないし、どうもグルグル巻きにされた包帯の隙間から、明かりが見える気がする。それに、ここはどう見ても病院とは思えない。そもそも、この男は本当に医者なのか?(ブラックライト)。

と、いう興味深い設定から始まる一編のほか、盗聴に取り憑かれた男や自称「吸血鬼」の物語など、日常と非日常を行き来する不思議な物語がこの「あくむ」には五編収められています。テーマは勿論「悪夢」です。表紙裏には「ホラーストーリー」と紹介されていますが、どちらかというとサイコ・サスペンスだと思います。

しかし、設定も面白く、スラスラ読める小説ですが、僕は非常に不満に感じる点がありました。冒頭紹介したような思わず引き込まれる出だしは各話共通しているのですが、オチが全部同じに思える所です。詳しく書くと興が削がれますので書きません。ただ、これは「あくむ」というタイトルからも狙ったことでしょうが、サスペンスとして先が読めるのはどうかと思いました。

せっかくの面白い設定なので、もう一ひねりして意外なオチをつけて欲しかったです。ただ、無理やり奇抜な結末を用意していないので、全体の読み口は悪くありませんので、この辺は好みでしょう。阿刀田氏の小説を思い出す部分もあります。

ところで、昨日の夜、僕は友人10人がアパートで焼死する夢を見ました。しかも、僕はそれを知っていて、「悪いことをしたけど、しょうがいないな」と思っているのです。そして、逃げた文鳥のことばかり気にしている……これが「あくむ」でなければいいのですが。

あくむ>amazon
読書ノート評価:50点
短評:文庫の発行年月日は1996年。携帯電話がちょっと珍しかった時代。なんとなく、あの頃の時代を感じるシーンもありました。
# by kyura130 | 2006-11-08 22:17 | 小説/読物
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