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誰の中にもあるプチ邪悪
自由に読めるホラー短編集 本作品は、モダン・ホラーの帝王と呼ばれるスティーンブン・キングの短編集です。本来は「第4解剖室」という作品集と合わせて一冊の本だったようで、こちらは後編に当たります。ジャンル的には短編ホラー集という風になるでしょうか。バラエティ豊かな「恐怖」が7編に渡って味わえます。 スティーブン・キングという世界観 僕が思うにスティーブン・キングの作品は大体低俗で反社会的、且つ悪趣味です。これはもう、作者本人が「そんなひと」だと思うのですが、これだけでは単なる猟奇趣味のB級作家です。キングがB級に留まらないのは、そのどうしようもない俗悪さの中に、あけすけな人間の本性が現れている(……ような気がする)からだと思います。つまり、誰でも持っている人間の獣な側面を極めてオープンに見せてくれる鏡のようなものです。 サイコホラーにスプラッタ、古典的怪談まで 本作品では、短編ごとにホラーのジャンルが違います。「なにもかもが究極的」はSF的なある陰謀のお話、「L.Tのペットに関するご高説」は夫婦の決裂を描いてますが、結末に不気味な余韻が残ります。「道路ウイルスは北に向かう」「1408号室」はどちらかといえば古典的な怪談で、悪霊が出てきます。「例のあの感覚……」と「幸運の25セント硬貨」は1アイデアによる作品。前者はややシュール、後者はホラー要素の無いお話です。そして、僕が最もキングらしいと思ったのが血みどろスプラッターの「ゴーサム・カフェで昼食を」で、滅茶苦茶すぎて笑ってしまいましたが、娯楽性は一番でした。 キリスト教文化圏における恐怖とは 僕がいつも感じる外国ホラーの違和感は「絶対悪=サタン」の表現です。今回の作品でも、絶対的に邪悪な存在が出てきますが、そもそも日本人には絶対悪の観念が無いと思うので、ピンと来ないのです。対して、日本の恐怖の源は相対的なもので、「怨念」や「呪い」「無念」などが源になっていると思います。逆にその違和感が独特の面白さとも言えますが。 とにかく、一度でもスティーブン・キングの作品を読んだことのある方なら、いつものあの「感じ」が味わえると思います。それは極めてアメリカ的で、決して道徳的に褒められた内容ではありませんが、まあ、道徳的に褒められた内容のお話は大抵面白くないと相場が決まっていますので、こっそりお薦めします。 ※この本は、Lazybugさん(from:Lzybug - Journal)に頂きました。まだ後2冊ももらってます。両方とも楽しみだなぁ。 <幸運の25セント硬貨>AMAZON 読書ノート評価:58点 短評:この短編集がきっかけでもっとキングが読みたくなり、あの名作映画「ショーシャンクの空に」の原作(刑務所のリタ・ヘイワース)が収録された「ゴールデン・ボーイ」という文庫も買いました。また、読みましたら紹介したいと思います。
by kyura130
| 2007-05-14 00:25
| 小説/読物
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