IE9ピン留め
新旧小説とコミック・ゲームのレビュー。参考点数付。
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skin by kyura130
渚にて―人類最後の日/著・ネビル・シュート、訳・井上勇(東京創元社・882円)
人類が滅亡する時、あなたは?

前回の更新から中6日開いたのは、この小説が中々手ごわかったからです。重いテーマ、淡々とした描写、少し古く読みづらい訳文、ページ当たりの密度の高さなど、久しぶりに歯ごたえのある内容でした。

僕は、世界が破滅するようなテーマを扱った物語が好きで、よくとは言いませんが、そういった映画を観たり、小説を読みます。この「渚にて」も、核戦争によって人類が死滅するというストーリーです。ただ、直接破壊されるのではなく、大量の放射性物質によって、病死するというところがミソです。オーストラリアに残された人々が、やがて来る破滅に怯えながら、精一杯日常生活を送る様子が描かれています。

他の作品と比べると、有名な絵本「風が吹くとき」に近い感じでしょうか。また、癌など不治の病に冒された物語とも共通するプロットで、日常生活が、普通であればあるほど、ラストが悲哀を持って迫ってくるタイプです。

読後、大きく感動はしませんでしたが、独特の息苦しさはありました。人類の過ちによって、未来がなくなるということについて、しみじみと嫌悪感が湧き上がってきました。ただ、SF作品にこう言うのもなんですが、リアリティが今ひとつで、あえて描写を避けたのでしょうか、現実はもっと激しいパニックになるのではないかと思います。

そして、決定的な違和感は、作者にとって、核による破滅は、他所から跳ね返ってくるものだということです。我々日本人にとって、核の破滅は、もっと直接的なものでした。惨禍を描写するだけではメッセージは伝わりませんが、登場人物が当事者ではないという弱さ、それがちょっと不満を感じる点です。

とはいえ、人類の最後の日、自分は何をしようかと、考え込んでしまいました。この小説通りの未来が来ない可能性が100%ないとはいえない、そんな日曜日に。

渚にて―人類最後の日>amazon
読書ノート評価:55点
短評:ちなみに、前回紹介した「居眠り磐音」シリーズと密度を比べると、
 ・渚にて<約44文字×19行×407ページ = 約340,000文字>
 ・居眠り<約35文字×16行×365ページ = 約204,400文字>
と、約1.7倍の読書量でした。
by kyura130 | 2006-08-27 17:26 | 小説/読物
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